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コケの聖地・北八ヶ岳の魅力と、糞ゴケの知られざる生態
日本三大コケの森に数えられている、北八ヶ岳の森。そこには都会では見ることのできない様々なコケが生息しています。
北八ヶ岳の入り口にある麦草ヒュッテは、コケ観察に行くファンにも人気の山小屋。山小屋ではかわいい苔グッズやテラリウムを販売しており、初心者向けのコケ観察会も主催しています。
山小屋の主人・島立正弘さんも大のコケ好き。特に、北八ヶ岳でしか見られない、ある特殊なコケがお気に入りだそうで…
そんな麦草ヒュッテのご主人・島立さんに、北八ヶ岳の魅力と、お気に入りのコケについてお話を伺ってきました。
北八ヶ岳の観察会に参加してみたい方、北八ヶ岳のコケをもっと深く知りたい方は参考にしてみてください。
※この記事はこちらのインタビューを要約しまとめたものです。島立さんと道草の苔トークを聞きたい方は、ぜひ動画もチェックしてくださいね。
>>【コケの達人①麦草ヒュッテ島立正広】北八ヶ岳コケと知られざる糞ゴケの生態(YouTubeに遷移します)
北八ヶ岳にはなぜコケが多いの?
北八ヶ岳に足を踏み入れると、そこは一面のコケの森。量も種類も豊富で、コケ好きにはたまらない光景です。いわゆる「北八ヶ岳」と言われる1700mから2899mの赤岳までの間に、519種ものコケが生息しているのだとか。
どうして北八ヶ岳にはこんなにコケが多いのでしょうか。
「山のなりたちに秘密があります。北八ヶ岳は比較的新しい山なので、土壌層が薄い。コケは根がないため、新しい森にはまず苔が生えるのです。ほかの植物との競争が少ない状態なので、コケが豊富に生える森なんですね」と島立さん。
北八ヶ岳でコケの森として紹介されている場所はすべて、コメツガの林。コメツガは針葉樹の中でも最も栄養が少ない新しい山に生える樹木なのです。
もう少し栄養がある土壌になると、シラビソの林になり、足元のコケの様子も少しずつ変化していきます。
さらに時間を経ると、土壌が豊かになり、様々な植物が生える森へと成長していくはず。現在は日本有数のコケの森ですが、100万年後には森の姿も変わっているのでしょう。
島立さんおすすめの「北八ヶ岳のコケ」は?
島立さんに、北八ヶ岳らしいおすすめのコケを尋ねてみると、「ムツデチョウチンゴケ」という答えが返ってきました。
「晩秋になると胞子体が出るのですが、その蒴柄(さくへい・胞子体の茎のような部分)が赤く輝いて美しいんですよ」。
私たちが訪れたときは夏だったので、まだ胞子体は出ていない状態。
でも大ぶりな葉がキラキラと特徴的なコケでした。今度はぜひ秋に来て、赤い蒴柄を見てみたいところ。
そういえば島立さん、本当はもっと好きなコケがあると聞きましたが…?
「はい。ずっと追いかけている特殊なコケがありまして…それは、糞ゴケと言われるコケなんです。」
糞ゴケ!?糞って…あのフンですか…?その話は、あとで詳しく聞くことにしましょう。
北八ヶ岳での観察会について
初めて北八ヶ岳でコケを見てみたいと思った方におすすめしたいのが、観察会に参加すること。麦草ヒュッテはもちろん、近隣の山小屋でもコケ観察会を開催しています。
「4つの山小屋、北八ヶ岳森林組合で「北八ヶ岳苔の会」というグループをつくって、年6回コケ観察会を開催しています」
「専門家をお呼びしてガイドをお願いしているので、コケの生態や分類など専門的な内容を学びながら森を歩くことができます」
講師としてガイドをしてくれるのは、分類学の専門家・樋口正信先生と、生態学の専門家・上野健先生のお二人。
「どちらの先生の解説か」「どの山小屋が主催している会か」によっても内容が変わってくるので、何度も参加しても飽きずに楽しめそうです。
コケの会が主催する観察会については、こちらのリンクから詳細をご覧ください。
>>北八ヶ岳苔の会ホームページ(コケ観察会の日程が載っています)
また、麦草ヒュッテでは、気軽なプライベートガイドも随時受付中。ちょっとコケの森を歩いてみたい…という方は、事前予約をすれば島立さんがガイドをしてくれます。
お友達と数人でのご利用も歓迎とのこと。ぜひ活用してみてくださいね。
「糞ゴケ」について教えてください!
島立さんが追っているという、糞ゴケ。それはどんなコケなのでしょうか?
「コケは種類によって、樹木や岩の上に生えたり、土の上に生えたり、好きな場所が決まっていますよね。糞ゴケと呼ばれるコケは、動物の糞や死骸などの腐食物の上にしか生えないというコケなんです」
通称・糞ゴケと呼ばれるコケは日本に4種類確認されていて、いずれも1500m以上の亜高山帯でしか見ることができません。
北八ヶ岳の山にも、カモシカやテン、オコジョなどの野生動物が生息しており、それらの糞の上で見つかることが多いため「糞ゴケ」と呼ばれているのだとか。
「糞ゴケは、明るさや湿度などがちょうどいいところにある糞の上に胞子がついたときに生えてきます。糞が分解されてしまうと生きられなくなってしまうので、それまでに胞子をつけて、新しい糞に胞子を飛ばすのです」
糞ゴケの胞子を媒介するのは、ハエ。糞ゴケはハエが好むような匂いを出してハエをおびき寄せ、胞子を次の糞に運ばせているのだそうです。
糞ゴケを見せてもらいました
せっかくだから糞ゴケを見てみたい!
すると「歩いて行けるところに、2種類なら見せられるものがありますよ」と島立さん。
「胞子が出ている糞ゴケを見つけたら、隣に糞を置いて、ちょっと胞子を付けてみたりするんですよね。そうすると新しい糞ゴケが生えてくる。そんな感じでちょっと培養しているものがあるんです(笑)」
案内してもらったのはいずれも、麦草ヒュッテから歩いて数分のところ。
これがユリミゴケ。左の群落から胞子をとって、右側の糞に移植しています。
これがマルダイゴケ。
国内で見られる糞ゴケは、ユリミゴケ・マルダイゴケ・ヒメハナガサゴケ・オオツボゴケの4種類とのこと。
いつかあと2種類も見て「糞ゴケコンプリート」を目指したいものです!
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今回は、麦草ヒュッテのご主人・島立正弘さんに、北八ヶ岳のコケの森の魅力をたっぷり伺いました。
関連のリンクも貼っておきますので、北八ヶ岳へコケ観察に行く際は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
※この記事はこちらのインタビューを要約しまとめたものです。島立さんと道草の苔トークを聞きたい方は、ぜひ動画もチェックしてください。
>>【コケの達人①麦草ヒュッテ島立正広】北八ヶ岳コケと知られざる糞ゴケの生態(YouTubeに遷移します)